研究概要 |
昭和63年度には、東広島市に存するマツダ株式会社の社宅居住者を対象に、方言意識の解明につとめた。平成元年度は、社宅居住者と自然発生的居住者との差を明らかにするため、マツダ株式会社の社宅を取り囲む、自然発生的集落の居住者を対象に調査を進めた。調査票の構成、調査内容は、昭和63年度と、全く同一であった。 調査者総数は1,010部であったが、回答を回収できた総数は695部であった。回収率は68.8%となる。うち、広島県出身者が590人、県外出身者が94人であり、11人の調査票には記入もれが多く利用できなかった。以上の結果から、県内出身者には次のような特色が認められた。 1.全体的に広島方言に対する好意的反応が高い。 2.50歳以上の年齢層では、広島方言と共通語との間に類似性を認める傾向が強い。 3.低学歴者のほうが、広島方言と共通語との似かよりを認める人が多くなっている。社宅居住者と自然発生的集落居住者の場合には、若干の差が認められた。人数がほぼ等しい30歳代の場合を比較してみると次のように言える。 1.自然発生的集落居住者のほうが、社宅居住者のほうよりも、広島方言と共通語との間の類似性を認める傾向が強い。 2.社宅居住者では、男女ともはぼ同じ傾向を示しているのに対して、自然発生的集落居住者のほうでは、男女間に違いが認められる。自然発生的集落居住者の男性に特徴的傾向が認められる。この違いの成立は、男女間の移動経験の差によるものと考えられる。 3.広島方言として意識されることの濃度な方言事象ほど、自然発生的集落居住性のほうが多く使用する傾向が強い。 以上のように、居住環境の差が、方言習得に大きく影響している。
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