計画の5本の柱のうち、第1の資料収集に関しては、11月の岡山ノ-トルダム清心女子大学の畑中多沖資料、素兄堂止静関係のもの(新潟の資料を含む)、2月の福井市立図書館を中心にした越前松平家本の季文古稀歌集・百合連詠の新発見を含めて、ほぼ順調に進んだ。 第2の翻刻原稿の作成では、『大沢文稿』『霞関集(初度本)』『和歌泉杣』『霜葉集』等順調に進捗し、後二者は完成した。なお、この他に作成した『貞享落穂集』(南部家本)が完成して当館紀要に載り、先に活字化された。江戸歌壇の初期歌会資料として、この分野の研究に大いに利用されると思われる。 第3の成嶋家歴代と畑中多沖研究に関しては、前者について三代信遍4代和鼎の歌論を整理し、片野達郎氏編『正統と異端』(印刷中)に発表した。多沖の歌業は目下資料収集と整理中。平成2年度中に論文化できよう。 第4の『歌林一枝』注解では発足した研究会が既に6回開かれ、一度成稿したものを吟味して発展させている。 第5の雅文資料の伝本書目作成は第1の柱にも関連するが、新資料の発見が相次ぎますます充実してきている。 如上の計画のほか、本研究の関係資料の多くが新日本古典文学大系『近世歌文集上』(岩波書店)の収集するところとなったため、全体に注解作業が必要となり、研究目的を更に深め、進展させるのに役立ってきている。
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