計画の4本の柱のうち、第1の資料収集に関しては、(1)仙台市民博物館、宮城県図書館、仙台市図書館、東北大学図書館、(2)ノ-トルダム清心女子学園図書館、岡山大学図書館、(3)神宮文庫、舞鶴中央図書館などでそれぞれ「歌文集」の調査・収集を行ない、特に畑中盛雄の著作類で新見を得た。緊急度を優先させたため、四国・九州の予定を割愛せざるを得なくなった。 第2の翻刻原稿の作成については、『大沢文稿』『霞関集(初度本)』を完成させ、近世中期雅文壇活動の解明の端緒に就くことが可能になった。初期の『落穂集』(南部家本)は本報告11の如く活字翻刻して一般の活用に供することができた。 第3の奥儒者成嶋家歴代と仙台藩畑中盛雄の業績の整理については、成嶋家初代・二代の歌論を整理し、公家と異る現実政治担当者としての「士大夫」意識に拠る文学観を指摘して、古学派の本居宣長の歌観との差を明らかにした。また、中近世を通しての最高最大の釈教歌注釈『類題法文和歌集注解』を初め畑中盛雄の業績を和文・漢文のそれぞれについて整理をした(本報告11参照)。 第4の『歌林一枝』注解は、鈴木健一、古相正美両氏との共同研究に発展したため、速度は鈍ったが、多角的な見地から進めることが可能になり、目下進行中である。 第5の雅文資料の書目作成に関しては、和文題の整理の見地から資料を再編成し、一覧原稿を本報告11の第1論文に発表した。
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