モデル依存型の拡張原理の候補である「因子組み替え原理」が句の強勢の規則に関してなす予測を検証し、その確からしさを確認するに至った。モデル自由型の拡張原理に関しても、英語の助動詞の縮約の吟味から、統語部門にも適用されうる一般性の高い一組の拡張原理を抽出するに至った。また、強勢規則の拡張で使った統語範疇の指示性の基本性も、言語習得や認知科学の文献から、その妥当性が裏付けられた。これらは、本研究の根幹の作業仮説、すなわち、言語習得には段階が認められ、その段階の移行の仕方は無制限ではなく、何らかの法則性に支配されており、この移行法則、すなわち、ダイナミックモデルでいう拡張原理が、大人の文法の基本的規則や構文と派生的規則や構文との差の一部をもたらしているとする考えの正しさを示すものである。さらに包括的な記述と説明をするために、研究期間終了後も本路線の仕事を続行する所存である。
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