中英語の頭韻構造には古英語の頭韻構造と比較してどのような特色があるか、また、その特色を捉えるためにはどのような接近法が妥当であるか、さらに、その接近法によって中英語における頭韻構造の消失過程をどの程度統計的に把握できるか、を検討した。 Piers the Plowman:C Text(Skeat版)において、各章ごとにどのような頭韻構造が確認されるか(つまり、標準的なaaAs、aaaAsなどがどのような分布を示すか。)、また、予備調査では、頭韻レジスター、強勢レジスター、語源レジスターと内容語レジスターを設定して分析を行ったが、レジスターによる分析は文体としての中英語の頭韻構造を明確にする上で非常に役立つことがわかった。さらに、各レジスターの充足度(degree of fullness)の統計を取り、内的にどの程度頭韻構造の消失過程が進んでいるかを調査した。 従来の中英語の頭韻構造の分析、例えば、Oakden、Borrott、Turvillepetre及びMatonisの分析では、古英語の頭韻構造を基準にして用例を集めたり、特色を述べるにとどまっていたが、本研究では、中英語頭韻構造を設定し、検討を行った。 古英語頭韻詩Beowulfの頭韻構造について研究したPope、Bliss及びCableの分析をそのままPiers Plowmanに応用すると中英語の頭韻構造を明確にすることができないので、その問題点を検討した。 Piers Plowman:C Textの頭韻構造を、頭韻・強勢・語源・内容語のレジスターを設定し、複層的(multi-layered)接近法を試みたので、古英詩ベオウルフの頭韻構造との比較はもとより、中英語Sir Gawain and the Green Knight、Wars of Alexander、St.Erkenwaldの頭韻構造との比較・検討を行うことができた。
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