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1988 年度 実績報告書

バルザックの言語思想

研究課題

研究課題/領域番号 63510264
研究機関東京工業大学

研究代表者

芳川 泰久  東京工業大学, 工学部, 助教授 (60175677)

キーワード十八世紀の言語思想 / バルザック / ジョン・ロック / ラ・メトリ
研究概要

本研究の目的は、従来、主として小説家個人の技法の発達史の一部としてとらえられてきた作家の言語観を、十九世紀前半における小説の言語形式および当時の言語思想という枠組から研究・把握しようとするものである。なかでも、オノレ・ド・バルザック(1799-1850)が十八世紀に展開された言語論・言語思想をいかに受容したかという問題に焦点をあてつつ、かれの言語思想の形成と展開を解明することを目指したが、その結果、次の諸点を確認することができた。
1)小説を書きはじめる以前のバルザックは・十八世紀の思想家から言語・哲学思想の影響をつよくうけていること。とりわけ顕著な哲学者は、感覚論の哲学を主張したコンディヤック、イギリスの経験論哲学のジョン・ロック、さらにフランスの医学・生理学・哲学の領域で著書をのこしたラ・メトリからの影響が大であることが確認された。
2)こうした作業と平行して、バルザックの全小説のなかから以上の三者の影響を顕著にしめす作品を特定する作業をおこなった結果、『ルイ・ランベール』を筆頭に、哲学的な系列に属す作品『あら皮』、『セラフィーヌ』、『追放者』等を確認できた。この三者のうち、『ルイ・ランベール』はジョン・ロックとラ・メトリの言語思想からの影響が作品生成の基礎として用いられていることが確認された。
3)以上の成果を踏まえ、『ルイ・ランベール』という小説の生成仮定を支配する言語・哲学思想を、ジョン・ロックの『人間悟性論』のなかの言語にかんする箇所と、ラ・メトリの『霊魂論』『人間機械論』のなかの言語と脳の関係について論及した箇所とに特定することができた。
以上の諸点を踏まえ、従来、作家個人の小説技法の発展と展開としてしか理解されていなかった部分に、思想史的な視野を導入し、その影響関係の一端を明らかにしたと言えるであろう。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (2件)

  • [文献書誌] 芳川泰久: 東京工業大学人文論叢. 第14. 172-188 (1989)

  • [文献書誌] 芳川泰久: 東京工業大学人文論叢. 第15. (1990)

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公開日: 1990-03-20   更新日: 2016-04-21  

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