1 帝国議会資料や埋立て・干拓・土木関係の資料の検討により、公有水面埋立法第5条4号にいう「慣習ニ依リ公有水面ニ排水ヲ為ス者」とは、主として干拓地における農地耕作者のことではないかとの仮説を得た。同様に「慣習ニ依リ公有水面ヨリ引水ヲ為ス者」は、主として干拓地における製塩業者のことを念頭において置かれた規定ではないかという知見を得た。これらの仮説を一部実証した。 2 広島県海田湾埋立免許取消訴訟の訴訟記録を検討することにより、干拓地の排水の秩序・機能の確保について、関係地方自治体、関係住民ならびに干拓地に進出してくる企業がいかに意を用いているかが判明した。自治体あるいはその首長と進出企業との間で結ばれる契約の中に「排水秩序配慮条項」とも性格づけるべき条項がかなり挿入されていることがその一例である。 3 排水施設の支配・管理が公法人としての市町村に形式的には移行しているが、実質的には以前として地元地域住民にゆだねられている-これが多くの排水区の管理秩序の実体ではないかという認識を得つつあるところである。 上記1・2・3の継続により、慣習排水権の権利としての性格、それが権利として成立する社会経済的基礎、権利の類型、地盤所有権との関係の問題などを解明していく計画である。
|