本年度は、次の諸点について検討を加えた。 1.資格制度と専門職化(Professionalization)。資格制度自体の発生および展開、またさらに特性の職種・技能の資格化は、職業の専門職化と密接に関連しているといってよい。本研究ではこの点の検証を、(1)歴史的には、古典的資格制度である医師、弁護士の両制度の、わが国における確立・展開過程の検討、および(2)現実の問題としては、今日においてその職種の専門職化(資格制度化、制度内容の質的改善・向上)をめざしている若干の事例、具体的には司法書士、建築士、積算士、看護婦等についての検討によりおこなっていくことにする。 2.資格業務の独占をめぐる問題。資格制度は、基本的には(あるいは、究極の目標としては)、当該職種に固有独自の業務を独占的排他的に実施しうる特権の法律による付与を目ざすものである。また、この特権は、その侵害者に対し法的制裁が加えられることが制度的に保障されることにより法的に保護される。しかし、実際の制度の上では、(1)制度創設時に存在した既存の資格の同種の特権を維持・尊重するために、制度上にも業務競合が客認されることが多く、このことは資格取得のための要件にも影響を与える。しかしこのことはまた資格間の紛議の原因となっていることも否定出来ない。さらに、(2)資格の基礎となっている技能の性質上、容易に類似行為をうみ易い例、(3)技術革新とともに新職種が誕生し、既存資格の存立をおびやかすこともある、等の理由で、さまざまなところで、さまざまな形で、資格者双互間の衝突、無資格者による違法活動の多発という現象がおこっている。本研究ではこの問題を法律および医療関係資格における事例に関して検討する。 3.資格制度の中央・地方間の偏差・対立関係。この問題は未開拓のものであるが、医療職につきとくに大阪府を例に検討する。
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