最終年度においては次のように研究を進めた。(1)これまで収集した資料・デ-タの再検討(2)最終報告書のための・研究全体にわたる基本枠組の検討(3)その他、個別職種についての資料収進の続行。(1)(2)の検討から、次のような(暫定的)結論を得た。 (1)わが国の資格制度は、沿革的にみると、弁護士・医師業に代表されるいわゆる専門職(profession)制度の展開という形で展開し来つたこと。いいかえると、これら専門職制度の展開のあとを知ることによって、わが国の資格制度の展開および制度自体の法構造上の特色あるいはその日本的特殊性を知り得ること、(2)次に資格に関する法制度(いわゆる「資格法」)は、次の四領域から構成されることとなった。四領域とは、【○!A】身分法(資格取得に関する法。試験・教育に関する規制がその主要な内容である)わが国では、初期から制度の導入・確立に対する国家のかかわりが顕著であり、試験・教育制度への国家的(すなわち法的)規制が重要な課題であった。【○!b】業務法(業務=サ-ビスの提供の仕方に関する規制)。わが国では、サ-ビス提供の相手方である一般国民の利益(生命・身体・財産)の保護を、国家がその代理人としておこなう。国家は資格の援与者であるとともに国民の利益の擁護者であると位置づけられる。【○!c】団体法(資格者の団体に関する規制を内容とする)。【!d】責任法(資格者の行為の法的責任に関する規制)である。もっとも【!d】の分野は、資格者の行使する技術の高度化・科学化および国民一般の人権保護の重要性の認織の高まりの両原因の影響によって、近年になり展開し始めたもので、一般に裁判所における判例法として存在し展開して来たもので、従って実定法化はおくれている。最終報告書は、これらの点の概要を述べることにとどめた。これら四領域のそれぞれの資格における具体的展開およびそこでの問題点については、改めて公にする機会をもつつもりである。
|