1.研究対象の限定 社会主義思想諸潮流における「自由と権利」、とりわけ「政治的自由」の位置づけを明らかにすることを課題の焦点とし、思想潮流別(または思想家別)の扱いではなく、国別の扱いでもなく、世界の社会主義思想・運動史上突出した意義をもつとみられる事象を中心として、そこに流れ諸思想、諸運動のかかわりあいを一時代の「問題構造」として対象にする、という扱い方を選択することにした。 2.本年度の主たる研究内容 (1)1848〜49年のヨーロッパ革命から1871年のパリ・コミューンにいたる時期。イギリスのトレードユニオニズム、フランスのプルードン派、ドイツのラサール派、そしてバクーン派、ブランキストといった諸潮流およびマルクス主義思想の対抗と交錯。とくに、そこでの対抗が「自由」派対「民主主義」派として整理される場合の含意(「国家社会主義」、「ブルジョア的社会主義」という相互の非難)。 (2)1875年ドイツ社会主義労働者党結成から十九世紀末〜二十世紀初頭の修正主義論争にいたる時期。この時期は、ロシアにおけるナロードニキ思想、運動の展開・変質という独自の思想史過程を含んでいる。前者については「成熟」したマルクス主義における「自由と権利」の位置づけ、ベルンシュタインの問題提起における「自由」民主主義」が、後者については、ロシア・ナロードニキ主義における「政治的自由」の独自の位置づけの官意が問題となる。 3.残された課題 (1)上述ののちに、20世紀におけるロシア・マルクス主義およびロシア革命における「政治的自由」問題の再整理を試みる。 (2)上述の本年度研究のうち、ラサール主義など手薄の部分について補充をおこなう。
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