本年度は、「『新しい人権』の承認の要件」について一般論としてまとめたほか、憲法上の自己決定権(「新しい人権」の一つ)に関する個別具体的研究としては、当該自己決定権が問題となりうる諸領域(医療領域、教育領域、家族領域等)のうち、日米比較法分析・日本の実態調査分析を基礎として、とくに、親の子どもを監護教育する自由(髪形・服装・バイクに関する校則の合憲性、普通教育課程における親の家庭教育の自由など)、および、憲法一三条の「生命に対する権利」と「自己決定権」との関連構造(自殺関与罪の憲法的評価、生命維持治療拒否権、「脳死」立法の憲法的評価、堕胎罪の合憲性など)について検討し、これらにかかる諸論文を公表した(掲載予定を含む)。また、強制入院させられた精神障害者の抗精神病薬拒否権を含めいわゆる「行動制限」をめぐる憲法問題については、「法と精神医療学会」(1989年3月25日〔東京都立大学〕)での学会報告の後、脱稿する予定である。その他、生殖技術と自己決定権(「子供を設ける自由」)、性的結合の自由、結婚・離婚の自由、夫婦別氏の自由などについては、本年度における調査・分析をさらに深め、平成元年度に論文として公表する予定である。また、アメリカの最新状況・憲法議論の現況を把握し、これを最終報告書『憲法上の自己決定権の日米比較法的・実証的研究』に盛り込むため、平成元年度に渡米の機会を持つべく、準備を進めている。
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