本年度は、憲法上の自己決定権(「新しい人権」の一つ)につき、一般理論として、(1)「『新しい人権』の承認の要件」を公表し、また、個別具体的研究として、(2)「親の子どもを教育する自由と憲法上の自己決定権」の公表、(3)「生命に対する権利と憲法上の自己決定権」(脱稿)で生命身体処分の自由と自殺関与罪・堕胎の自由・生命維持治療拒否権について論じ、(4)「性的結合の自由と憲法上の自己決定権」(脱稿)では同性愛行為を禁ずる刑法を合憲としたアメリカ連邦最高裁判決の問題点を析出した。また、(5)「入院患者の自己決定権と『行動制限』規定」(脱稿)は学会報告を基に論文化したものである。その他、自己決定権と関連する権利として情報プライバシ-権の性格をめぐる論議に関連して、(6)「憲法上のプライバシ-権の条例による具体化の意味」(脱稿)を執筆した。本科研研究については着実な実績をあげることができ、また、幸いにも、本科研研究をさらに意味あるものにすべく同一テ-マで海外研修の機会が与えられ、帰国後、最終報告書を完了させることができると考えていたが、規則上、研究廃止届を出さざるをえないとのことであり、かかる運用については異論がないわけではないが、規則を遵守し、研究廃止届を提出する。帰国後、平成2年度中に、最終報告書をに相当する書物『憲法上の自己決定権の日米比較研究』を公刊する予定であるので、出版助成につきご配慮いただきたい。
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