国際人道法の中核は、武力紛争時における傷病者等の人道的保護を定めたジュネーヴ諸条約(1949年、わが国も加入ずみ)と、それを、補充した2つの追加議定書(1977年、わが国は未加入)であり、これらの諸条約を、最近では、国際人道法 International Humanifarian Lawと呼んでいる。その作成は、締約国の政府機関がこれにあたるのは当然であるが、国際人道法諸条約は、一般の国際条約と異なり、その作成についても、適用についても、本来は非政府機構NGOの一つである赤十字国際委員会ICRC、赤十字社連盟、各国赤十字および赤新月社がこれに関与している。 今年度は、とくに、この国際人道法(とくにジュネーヴ条約)が作成されるにあたっての赤十字国際委員会の役割を中心に内外の文献、資料を収集して、その分析、検討にあたった。 この場合、戦時国際法、Law of warの中における国際人道法の特色も検討し、何ゆえに国際人道法において国際赤十字の役割が重要であるかも研究した。その成果は、一部後記の発表論文の中でも取上げた。 また、各国の赤十字社、赤新月社の活動について、わが国における日本赤十字社の前身である「博愛社」の成立と西南役における活動についても資料、現地調査などにより解明した。外国の赤十字社についても、文献により1863年の国際赤十字(当時は戦時傷病者救済協会)の設立以前において、すでに赤十字社の前身となる傷病者救護機関が存在していたことを知りえたのは大きな収穫である。わが国においても、博愛社設立以前に、箱館戦争における高松凌雲による箱館病院の設立と双方傷病者救護の史実が認められる。
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