1.国際人道法は、武力紛争時における傷病者等の人道的保護を目的とした諸法規であり、1964年のジュネ-ブ条約以降、数次の改定をへ、また、その保護対象も、海戦への拡大、捕虜・抑留文民への拡大をへて、現在では、1949年の戦争犠牲者保護4条約を中心にし、1977年の追加議定書によって補充されている。 他方、国際赤十字は、アンリ-・ジュナンの『ソルフェリ-ノの思い出』の出版を契機として、1863年にジュネ-ブで、「戦地傷病者救恤の5人委員会」(1880年に赤十字国際委員会となる)が創立され各国にも、「救恤協会」(後に各国赤十字社となる)が作られた。 2.国際人道法条約も国際条約である以上、その法典化、適用にあたり締約国政府が関与するのは当然であるが、条約・追加議定書の改定・条文作成にあたって、本来非政府機構NGOである赤十字諸機関が大きな役割を果たしている。本研究においては、内外の文献と資料によって、この点を具体的に解明し、最近では人権の国際的保障と密接に関係のあること、広く非常事態における人権保護の視点でとらえる必要のあること、世界法の性格を持つようになってきたことなどを明らかにしえた。 (1)国際人道法作成にあたっての国際赤十字の役割については、条約作成のための外交会議に先立ち、赤十字国際委員会のイニシアティブにより準備作業、基礎条約案の作成が行なわれる事実を確認した。 (2)国際人道法適用にあたっての国際赤十字の役割については、武力紛争時に、各国軍隊の衛生部隊を補充する形で、各国赤十字(赤新月)社が、傷病者の救護にあたるほか、赤十字国際委員会が、利益保護国に代り、国際人道法の適用確保にあたり、交戦国の捕虜収容所を訪問し、中央情報局により情報を収集、伝達し、救恤品を配布するなどの人道的任務を行なっており、その活動は大災害にも及んでいる事を確認した。
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