本年度は、行政改革の内、国鉄と電々公社の民営化に力点を置いた研究を行ってきた。 1.日本の行政改革および財政再建に関して書かれたルポルタージュを書籍、雑誌記事、新聞報道などを、国会図書館などを通じて、体系的に収集、調査した。 2.JR、NTT、関係官庁(運輸省、郵政省、大蔵省など)、自民党政務調査会各部会、労働組合(国鉄労組、電々労組)等によって公刊された資料あるいは内部資料をできるだけ収集した。 3.行政改革、財政担当のジャーナリスト、国鉄、電々関係者、自民党関係議員、担当大臣経験者、野党の国会対策委員等に対するインタビューを、実施した。 4.以上にもとづいて、現在、国鉄、電々についての簡単なケース・スタディを暫定的にまとめつつある。 5.同時に、西ドイツおよび米英(とくにサッチャー政権)についての70年代末から80年代におけるイデオロギー上の変化と行財政改革の実際についての著作、報告書などを収集し、研究した。 これらの研究を通じて、日本においては、行革イデオロギー(経済的自由主義)と実施の実態とのズレが非常に大きく、自由主義イデオロギーによってコーポラティスト的構造が一層進行しているというパラドックスが明らかになってきた(とくにNTTについて)。なお、この研究の過程で、「新保守主義の時代のイデオロギーと政治」と題する講演を行い、成果の一部を公表するとともに、批判を仰いだ。また、理論的問題の検討のため、政治学理論誌に小論「テクノクラート理論の再編」を執筆、間も無く公刊の予定である。
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