サッチャー三選後、行政改革の範囲は拡大し、スピードも加速されてきたが、公務員制度についても極めて大規模な改革案(「政府管理の改善」)が提出され、サッチャー首相によって基本的に受け入れられることになった。本研究の関心を持つテーマと多くの点で重なる問題を論じている首相官邸効率室によるこの改革報告書に研究の焦点を合わせ、その後刊行された政府報告書に関する議会特別委員会の報告書並びに関連学術論文を検討した結果、本年度は主として以下のような知見をえることができた。1.改革の底流には1968年のフルトン報告以来の責任管理(accountable management)の考え方が一貫して流れている。2.しかしサッチャー政権下の公共支出削減のもとで戦略管理から資源管理に力点が移り、また強力な政治的支持のもとに管理改革が進められることになった。3.フルトン報告とは対照的に今次改革は閲歴公務員制(Career Civil Service)の解体を考えているとも見られる。4.今次改革の基本的考え方は、国家公務員を政府出案に携わる中核グループと、それ以外の日々の行政事務執行に携わるグループの二つに分け、前者は従来通り大臣への情報提供、助言を行うグループとし、後者については中央省庁の組織から分離してエイジェンシーの下に移管する。5.このエイジェンシーの自律性を高めようとすれば、伝統的な議会への大臣責任との関連で、改めて責任(Accountability)のあり方が提起される。6.また中央官庁の管理改革をさらに推進しようとすれば、管理者の自律性と大蔵省の中央統制システムとのあいだの緊張関係についても再検することが避けられない。等の知見をえることができた。これらの点については近く同志社法学にも論文を発表する予定である。また来年度において、これらの問題点をさらに深く分析していくつもりである。
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