P次元の球面上の統計学を取扱う時の基本的な分布としてLangevin分布がある(3次元の場合にはvon Mises-Fisher分布という)。本年度の研究は1.Langevin母集団の母数に関する検定問題、2.球面上の二群の母集団の判別、分類の問題、等を中心に行なった。 1.母集団分布の集中分布の集中母数(分散に対応する)に関する検定統計量として尤度比規準、Wald統計量、改良Wald統計量、Rao統計量を求めて、その分布の漸近分布(標本数が大きい場合)を与えている。Simulationを行ない漸近展開の精度について検討した。特に或る種の統計量では漸近展開式は希望す程度の精度を与えないことがわかり、それは統計量の持つ「くせ」によることが判った。検出力の比較結果として改良Wald統計量が取扱っている。母数の範囲に対して最も良いことがわかった。またk個の母集団の集中母数、方向ベクトルの等値性についての尤度比規準を与え、その漸近分布展開を与え、Bartlett補正が出来ることを示した。 2.二群の母集団を判別する統計量(母数が既知の場合)として尤度に関するものを与え、そのモ-メント、Simulationによる頻度グラフを与えた。またPlug-In統計量を定義し、判別点を求めるために標本数(トレ-ニング標本数と判別すべき標本の数)が大きい場合の分布の漸近展開を与えた。また理論値とSimulationとの比較がなされ、漸近展開の有効性が示された。第3の統計量として、尤度比検定による統計量を与え、同種の議論を行なった。その結果、誤判別確率はPlug、In統計量も尤度比検定基準も大変によく似た値を与える(判別点を原点に取っている)ことがわかったが方向がすれていくと分布がずれていくことが各種統計量をみることからわかった。 以上今年の研究結果を見ると、実際問題への適用という点から或る程度の成果が得られたものと思う。
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