(1)総務庁「全国消費実態調査」(昭和59年版)を主として利用しながら、資産純増の観点から家計部門の貯蓄率を推計した。推計結果によると昭和59年の貯蓄率は11.4%であり、様式のキャピタルゲインを除くと9%台まで下がった。10%前後という水準は必ずしも高いものではなと考えてよいだろう。 (2)減価償却分だけでグロスタームの貯蓄率は10%ほど引き上げられるというのが昭和59年の実情である。日本人は貯蓄好きであるとか、日本は高貯蓄国であるとかいわれて久しいが、その内実は、住宅の建てかえや耐久消費財の買いかえのためにお金を貯めているという色彩が濃厚であり、資産純増に結びついてる部分は必ずしも多くない。 (3)ネットタームで10%前後の貯蓄率であるにもかかわらず、近年において日本の家計資産が著しく蓄積されたのは、主として土地と株式のキャピタルゲンが大規模に発生したからである。とくに昭和61年以降の3年間におけるキャピタルゲインは年々の国内総生産(GDP)を上回った。過激な円高もあり、資産大国日本というイメージが世界に定着しはじめている。 (4)2人以上の普通世帯の資産保有額は実物資産と金融資産をあわせて平均値二千八百万円、中央値二千万円であった。全体としてみると、保有資産の85%は実物資産であり、とくに土地保有額の占める割合が56%となっていて断然大きい。 (5)同じ年(1984年)のアメリカの調査によると、平均値十万1900ドル、中央値五万100ドルであった。1ドル240円で換算すると、1984年時点で日本の家計資産はアメリカのそれを平均値・中央値とも若干ながら上回っていた勘定になる。
|