研究概要 |
1.課税バランスを従来と比較して所得軽課および資産・消費重課の方向に改めることは基本的に望ましいとして多数派の同意を今日の日本はとりつけているように思われる。このような方向に沿った税制改革の分配的側面を総務庁統計局『全国消費実態調査』(昭和59年)を利用して調べてみた。その結果,得られた主要なポイントは以下のとおりである。 2.まず消費税を導入し,代わりに住民税・所得税の減税を断行した竹下税制改革により勤労者世帯は84%が減税となった。全体として増税となった世帯は22%あったが,その中では無職世帯(82%が増税)と70歳以上の高齢者世帯(55%が増税)に注目する必要があるように一見みえる。しかし,これらの世帯で増税となった世帯の税負担水準は税制改革後においても同一所得階層に属している勤労者世帯の税負担を大きく下まわっている。今回の改革は水平的公平規準の達成という視点からみると一歩前進であり,増税になったからといって特に大きな問題はないように思われる。 3.固定資産税を増税し住民税を減税するというパッケ-ジは勤労者世帯にとっては全体として税負担が軽くなるので歓迎すべきものである。高額資産の保有者でありながら低所得に甘んでいた者の税負担は、このような改革によって増大する。このような税負担の増が望ましくないと仮に主張するならば,それは資産に担税力がないというに等しい。 4.社会保検料の料率引上げは消費税率の引上げと比較して議論すべきものである。勤労者世帯にとっては社会保検料の引上げより消費税率の引上げの方がメリットは大きい。来たるべき高齢化社会においては、年をとっても応分の負担をしつづけるシステムを構築することが求められよう。
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