日本の労働組合は、企業別労働組合だと言われる。しかし、万能熟練的職能を持つ労働者を中核にしがら(この点に着目すれば職能別組合)当該産業の労働者全体を(この点に着目すれば産業別組合もしくは一般組合)ということになる)企業横断的に組織している労働組合も存在しており、その組織と機能が注目される。戦後の日本で企業ではなく職能もしくは産業に拠って組織された組合として、全国50万人規模の全建総連傘下の労働組合がまず想起されよう。この組合は、高度成長期にクラフト・ユニオン的なユニオン・レ-トの設定を試みた。「協定賃金運動」の路線である。「協定賃金」の協定とは、労働組合組織内部の協定であって、売手・買手間の協定ではない。つまりユニオン・レ-トである。しかし、この組合決定による賃金は、クラフト・ユニオン的な労働供給コントロ-ルが伴っていなかったので、要求賃金的性格に留った。その意味では、価格が売手買手間の制度的交渉によって決る形での労働市場の組織化は末達成のままに終った。 他方、全建総連の援助も得ながら1972年に組織されたユニオン日演協(日本演奏家協会、後に主としてキャバレ-・クラブのバンドを組織していた日本音楽家労働組合と1983年に合併して日本音楽家ユニオン)は、先発の建設労働組合の機能を追越した。すなわち、レコ-ド会社・NHK・放送会社と年々、演奏料を協定する機構がいち早く作られたのである。従前は群小プロダクシションが多数介在する自由市場的な報酬システムだったのが、労働組合を一方の当事者とする組織的価格システムになった。このシステムでは、演奏家の受取料金のみでなく、仲介請負人的存在である業者=プロダクシションへの支払料金をも定めることで(ただしNHKとはこの支払料金のみ協定)、業者のマ-ジンの金額をもユニオンにより保障される具合となった。
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