本研究の課題は、水田農業を確立する為に試みられている農地の流動化を基軸とした様々な取組、土地基盤の整備や転作作物の団地化と輪番化、互助制度の活用、農機具の共同利用等を有機的に関連づけるなかで、集落規模での水田稲作農業の一展開方向として「集落農場」を展望し、その確立に至る階梯を明らかにすることにある。初年度の63年度においては農業センサス集落カードと本町村役場・農協支所等での間取り調査、集落アンケート調査により、佐賀平坦部の各集落における取組の概況把握を行ない佐賀平垣部水田稲作農業の集落レベルでの類型化の作業を行なっている。現時点で明らかになったことは、佐賀水田稲作農業は協業化・共同化の歴史的背景として、(1)戦前の「佐賀投階」当時における泥土揚げ作業等の共同作業投階、(2)昭和40年代初頭の「新佐賀投階」当時の田植え・防除等の共同作業投階、(3)40年代後半から始まる中・大型農業機械の共同利用を目的とした生産組織投階という、三つの投階をもっており、農地の共同管理・利用を基礎に展開されようとしている今日の生産組織をその延長線上に正しく位置づける必要があること、二点目として、農地の共同管理・利用を中心にした今日の農業生産の組織化への各集落での試みを、(1)用・排水分離を含めた土地基盤整備状況、(2)作目構成の差異、(3)機械利用組合などの協業・共同組織の有無、(4)ブロックローテーションや互助制度への取組、(5)兼業化の進行具合、農業専従者や後継者の存在形態、等の指標をもとに分類してみると、土地基盤整備が完了した地区で稲・大豆・麦に作目が限定され、しかも兼業化が進んだ集落で比較的集落農場化への進展がみられた。これらの共通する特徴は各農家の均質化であり、逆説的ながら、この均質化の進んだ地域から地域複合農業を営む集落農場への階梯づくりを行なう必要がある様に思われるが、これは以後の本研究に課せられた課題である。
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