本研究の課題は、水田稲作農業を確立するために試みられている農地の流動化を基軸とした様々な取組み、土地基盤整備や転作作物の団地化と輪番化、互助制度の活用、農機具の共同利用等を有機的に関連づけるなかで、集落規模での水田稲作農業の一展開方向として「集落農場」を展望し、その確立に至る階梯を明らかにすることにある。初年度に明らかにされた集落の特徴と水田稲作農業の類型化をもとに、本年度は、佐賀平坦部の集落のなかから20集落を摘出し、土地基盤整備その他の個々の取組みの具体的な過程と今後の計画、見通し等について、立ち入った聞き取り調査を行ない、水田稲作農業の「集落農場」への階梯について具体的な肉付け作業を行なっている。現時点で明らかになったことは、 (1)第一段階の土地基盤整備において、工事単価の上昇に伴う負担金の増加が整備促進の妨げになっている半面、既に整備を終えた集落では一層の有効な農地利用を要請し、集落農場化を促す要因にもなっている。(2)機械利用組合等の協業組織については、共同購入・個別利用方式がオペレ-タ-委託方式よりも多いが、これには人材難が一つの制約になっている。(3)作目構成では、米麦と転作大豆に均質化された集落で集落農場化が進んでいるが、施設園芸が盛んな集落ではあまり進んでいない。専業農家が労働集約的な作目に専作化したため、集団転作やオペレ-タ-等で中堅的な役割を担えないのがその理由である。(4)その意味で、米麦作に関する限りでは、専業農家も兼業農家同様に主業ではなくなりつつあり、専業何れの農家にとっても副業化している。(5)本研究の主眼点である集団転作に伴うブロックロ-テ-ションと互助制度の導入は、各集落とも積極的に行なわれているが、その方法は多種多様である。今後の作業としてはこれらの差異を明確にし整序だてるとともに、これを基軸に農業機械や農地、人材の有効利用、作目調整問題の詰めを行なう。
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