本研究の課題は、水田農業を確立するために試みられている農地の流動化を機軸にした様々な取組、土地基盤の整備や転作作物の団地化と輪番化、互助制度の活用、農機具の共同利用等を有機的に関連づけるなかで、集落規模での水田稲作農業の一展開方向として「集落農場」を展望し、その確立に至る階梯を明らかにすることにある。本年度は、平成元年度までに明らかにされた「集落農場」に至る個々の階梯について、4つの典型的な集落を抽出し、集落内の個々の農家レベルまで降りて調査を行なうとともに、3ケ年にわたる本研究の最終集約を行ってきている。 今回の農家戸別調査の対象集落には、「集落農場」化を測る基本指標のうち、圃場整備の有無、機械の共同利用の進捗度、集団転作(ブロックロ-テ-ション、互助制度)の三基準をクリアした集落のうち、農家の異質化をめぐる今一つの指標、作目構成(兼業化)の差異をもとに次の4つのタイプを選んだ。兼業化が進ンだ集落のうち、集落内に米麦専業農家が残っている集落(a)では、その農家を中心に他の農家を構成したところの集落農場化がみられるが、施設園芸や水田酪農などの労働集約型作目専業農家がいる場合(aー1)といない場合(aー2)とで、転作のあり方をめぐってそれぞれ個別の課題を有しており、また、米麦専業農家が残っていない集落(b)では、労働集約型作目専業農家の有(bー1)・無(bー2)を問わず、稲作の担い手捜しが大きなネックになっている。異質化する農家間の利害を調整しながら佐賀平坦部の基幹作=稲作の担い手を創立する作業が急務となっているが、そのような作業の推進母体として農協組織への期待が強まってきている。 以上が、本年度の農家戸別調査において現時点で明らかになった点の概要であるが、3ケ年におよぶ本研究全体の取りまてめには今暫くの時間を必要としている。
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