ここ数年の間の東京圏を中心とした地価高騰は、まさに"狂乱地価"であり、歴史上にも残ることは必至である程、異常であった。 わが国の地価高騰は、これまでも経験したところである。過剰流動性時の"列島改造論"時であり、さらには明治40年代から大正初期にかけても、すでに日本では異常な高騰がみられたのである。 わが国では、この1世紀以内に3度の異常な地価上昇を経験したのである。欧米先進国が、せいぜい2度であるのと比較すると、日本は地価が上昇しやすい政治、経済体質にあるともいいうる。この点が「土地本位制資本主義」ともいわれるところであろう。 その原因については、これまで識者から多くのことが指摘されてきたが、そのひとつ、しかも最大の要因とも考えられるものに、地価上昇の経済メリットが土地所有者にほぼ独占的に帰属することがあろう。 すなわち開発利益の多くが地主のものになっているのである。本来、地価の上昇は、土地所有者の投資努力よりも、租税などを財源とする公共投資によるところが大きい。それが、土地所有者(地主)に独占されるならば、まさに"不労所得"といわなければならない。このような土地政策の不備が、土地投機を活発化させ、地価が極限にまで高騰していくことは、いうまでもない。 地価の安定、負担の公平、あるいは都市整備財源の確保のためにも開発利益の帰属とその回収は、各国における永遠の研究課題でもある。各国は、それぞれの国情に合致するような土地政策、とりわけ土地税制を活用して対応している。わが国の場合もその例外ではないが、不充分であるのが、今般の狂乱地価を招来させた、といっても過言ではない。 このような視点から、今後のあるべき開発利益の帰属と回収について研究し、その成果を別紙のように公表した。
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