平成年度になって、さすがに東京圏や関西圏の狂乱地価に沈静化の兆しが見られたが、遂にこれまであまり上昇しなかった地方圏で急上昇した。この結果、日本列島は前回の狂乱地価時の列島改造論時と同様に、全国で上昇するという最悪の状態を迎えつつある。これは、東京圏などで得た含み益を原資として、ただ単に相対的な割り安さ感によって、地方の土地を買い占めており、実需とは何の関係もない、マネ-ゲ-ムにすぎない。しかも最近では、世界の不動産市場に進出している。 これは、わが国の土地政策が土地を「私的財」として尊重しすぎた結果、都市計画が土地所有者の既得権エゴを許した不完全さと、土地税制の不備、さらにはカネ余まりを背景にして、狂乱地価が発生したことは否定できない。これらの不備の是正を早急に実施しないと、地域格差と資産格差を極限にまで拡大させてしまうことが懸念されている。 このような状況の中で、土地の持つ公共性の重視、利用・計画の優先投機の抑制、そして開発利益の還収を大前提とした「土地基本法」が制定された。この基本理念をどのように各個別法で生かし、国民全般の利益のために一部の圧力団体の反対をおしきって実現できるか否かが、国内問題の最大課題であるといっても過言ではない。 土地政策の中で重要な役割をになっているのが、土地税制である。国民の租税負担によって生じた開発利益を土地所有者等に独占されることなく、どのように還収するかは、古くして新しいテ-マでもある。多くの国で、この開発利益の還収の重要性が指摘され、実行もされたが、必ずしも成功したとは言い難い。 しかし、最近、日本と同様に地価高騰の激しい韓国で、開発利益の還収法などの土地関連法が成立し、その結果が期待されている。わが国のこんごの土地政策、税制のあり方について参考とすべく研究を続けたい。
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