63年度に予定した研究計画は以下の如くであった。 1.文献研究を通じて、西ドイツ経済の社会的市場経済原則の生成と機能を明らかにする。 2.近年における社会的市場経済原則の再検討なし擁護する立場での論争点を整理する。 3.経済・財政・金融政策にかかわる行政官庁の資料を収集する。 4.近年実施された構造政策にかかわる諸政策について資料を収集する。 研究開始から現在までの間に、資料収集と整理は予定通り進行した。経済省および連邦統計局の統計資料は現在コンピューターに投入し、整理している段階にまでいたっている。構造政策論争については具体的事例を選び、大西、井上共著としてその成果を既に発表した。研究を進める過程において、西ドイツ国内の構造政策はEC全体での秩序政策の枠組のなかで考える傾向が近年強くなっていることが明らかになったので、この点も扱うことができた。特に、1992年のEC統合への動向、世界経済との関連で通貨制度の問題があり、この点に関しては古賀が研究成果をまとめている。秩序政策が西ドイツという国内の枠を越え、EC全体政策との関連が強くなってきているので、競争理論を広く経済理論一般の中に位置づけし直す必要もあり、この点に関しては井上が研究成果を発表している。 以上みる如く、初年度において基礎的な研究を終了し、その成果を既に発表できたのはこれからの研究にとって大きな前進となった。
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