研究概要 |
本年度に予定した研究計画は,以下の如くであった。 1 旧度年までの実証研究の成果を理論的に解釈する。 2 西ドイツの構造政策論争の特質を明らかにする。 3 研究成果を発表できるまでにまとめる。 (1)については,80年代における西ドイツ経済発展の実証分析を行った。80年代初頭の構造危機を,マクロ経済的には80年代中葉に克服している。「小さな政府」を指向し、民営化を進め,市場経済活力を生す政策は成功したといえよう。しかし,市場経済原理が必ずしも必かない労働市場での問題は残り,依然として高い失業率は解消されていない。 (2)については,市場経済原理と構造政策の理論的整合性に問題を残している。政示論議とその思想において,計画経済体制との対立は明白にするものの,総合経済体制における理論的一貫性を確立するまでにいたっていない。(研究分担:古賀,井上)むしろ,構造政策は中央政府レベルでは拒否されるものの,州政府レベルにおける地域政策として実践されているのが現状である。92年のEC市場統合にむけて,90年には「競争制限禁止法」の第5法改正がみられたし,通賃・金融政策との整合性が問題として浮び上ってきている。 (3)については,90年の両独総合によりドイツ経済は新たな局面を向えており,90年代のドイツ経済は,80年代の西ドイツ経済の延長線上で解釈することは困難となった。ここ1〜2年のドイツ経済の発展と政策論争を見守ることが必要となった。
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