1ドル360円固定レート期、すなわち1949年から1971年の期間におけるわが国対外金融の構造、国際金融政策の展開について歴史的・実証的に解明することが、本研究の課題である。交付申請書研究実施計画にも述べたように、本研究の対象資料はそのほとんどが未公開・未整理であるため、昭和63年度は、大蔵省国際金融局および日本銀行を中心とする保有資料の蒐集・整理・分類を研究実施の重点として設定した。 内容的には、(1)国際収支基礎データの細目的再集計・再分類 (2)各重要事項別の担当機関の機構変遷と政策決定・意思決定過程の解明のための資料発掘 (3)各種国際金融会議への参加状況とそこでの討議内容を明らかにしうるような資料蒐集 (4)「円切り上げ」前後の政策形成・実施状況を知りうる第一次資料の発掘、等を重点とした。このうち、(1)、(2)、(4)についての資料は、ほぼ整理を完了し、(3)については一部の機関、特定の時期の会議については、整理の目途がついた。 (2)については、政策主体内部とくにいわゆる「通貨当局」と称される政策主体の内部に相当早期から「拡大均衡」論と「安定均衡」論の対抗が存在していたこと、(4)については、これも従来想定されているよりも強く、対外圧力ーーアメリカだけではなく西ドイツ、フランス等も含めた対外圧力が存在し、それが円切り上げ、スミソニアンレート、完全変動相場制移行というプロセスの内実の波動を増幅したこと、等があきらかとなった。本年度におけるこうした蒐集資料の成果にもとづき、次年度は資料蒐集の補完をすすめるとともに、研究のとりまとめを行う予定である。
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