1.本年度はまず、ライン河・ロ-ヌ河・ド-ナウ河流域西ヨ-ロッパ商工会議所連合(通商、ライン会議所連合)について、昨年度からの資料収集と分析作業を続行した。1989年4月末に当連合創立40周年記念シンポジウムがストラスブ-ルのヨ-ロッパ会議議事堂で開催され、唯一人の日本人として招待されたので、これに参加し貴重な情報と資料を直接入手することができた。この機会に、該連合の原則である地域主義とヨ-ロッパ経済統合と加表裏一体の関係にあること、またその象徴としてライン河航運が今日的意義を失っていないことをあらためて確認した。 2.ストラスブ-ル滞在を利用して同地のライン河航行中央委員会を訪問し、資料の調査、収集を行い、年次報告書を定期的に入手する手はずを整ることができた。その際、該中央委員会の好意で少からぬライン河航運史関係資料を無料で入手できたので、本年度の設備備品費支出の重点を西ドイツ産業・地域構造政策史関係図書および西ヨ-ロッパ経済統合関係図書にふり向けることができた。該中央委員会事務局最高幹部との会談を通して、国際河川としてのライン河の管理機構がEC経済統合の一つの制度的基盤となっていることを再確認しえた。 3.1989年秋以降の急激な東欧改革の展開はついに両ドイツ統一を政治日程にのせるところまできた。この激動によって両ドイツ間の東西較差ばかりでなく、双方がそれぞれ抱える地域較差、すなわち二つの南北較差も露呈するにいたった。西ドイツではバ-デン・ビュルテンベルク、バイエルン両州(南)とノルトライン・ベストファ-レン、ハンブルク、ブレ-メン三州(北)との、東ドイツではザクセン、テュ-リンゲン諸県(南)とブランデンブルク諸県(北)との経済成長較差であり、それは二大河川軸、ライン河とエルベ河の機能変化とも関連している。この問題の分析も来年度は本格化する予定である。
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