研究概要 |
研究期間最終年度に研究対象の重大な変化が生じた。1990年7月1日の通貨統合に続いて同年10月3日には東ドイツが西ドイツに編入されてしまったからである。したがってこれが西部ドイツの地域分化にどのような影響を及ぼすかについて留意しながら,今年度の報告を行う。 (1)西ドイツにおける地域変動の主なものとして,ライン河を軸とする隣接地域の結合による国際地域(regio euregio)の形成および西南・西北ドイツの地域分化(南北較差)が挙げられる。いずれもECを核とするヨ-ロッパ経済統合の進展と関連しているかぎり西ドイツ経済の空間的集中度を高めるものではなく,むしろ遠心力を生み出し分散度を高めるものである。したがってドイツ統一がこの空間変動のベクトルにどのような変化を及ぼしうるかが今後の課題であろう。 (2)とまれライン河航行中央委員会や西ヨ-ロッパ商工会議所連合の活動に照らすならば,ドイツ統一がライン軸に沿うeuregio形成にただちに影響を及ぼすものではありえない。ただ南北較差については東西較差の内部化により南北較差が大幅に相対化されるという意味ですでに影響を及ぼしており、またエルベ軸の復権はいずれ北ドイツに好影響を及ぼすであろう。しかし当面はライン・マインード-ナウ大航路建設が南北較差に及ぼす影響の方がより注目に値する。 (3)いずれにせよ西ドイツの地域分化は,また今後予想される新しい地域分化はすでに確立している史的経済空間構造,すなわち西南・西北・中部ドイツ経済圏という相互に自立性の強い三原経済圏の鼎立という枠組の中で理解されるべき空間現象である。
|