研究概要 |
「ドイツ経済調査委員会」(アンケート委員会)の「手工事」に関する調査およびドイツ帝国統計に基づきながら、1920年代から大恐慌期にかけてのドイツの中小経営の実態とその変化、中小経営者自身の同時代的な問題認識を分析した。(1)まず1920年代においても第一次大戦前と同様中小規模の企業は、金属加工、木材加工、皮革加工、衣料品製造、食品加工および建築業などの加工業や組立業において多く、それらが吸収した労働力は重化学工業のそれをはるかに上廻っていた。戦前と同様この時期には労働力200人以下の中小の資本制的企業は増大しており、この時代が単純に独占資本や金融資本による経済支配といえないことがわかる。これらの中小経営は、しかし、独占を形成しえないから全体として過当競争の状況にあり、次第に利潤率を低下させつつあった。(2)そのような難かしい状況は大恐慌のなかで決定的となり、とりわけ労働力50人以下の資本家的企業をはじめとして、この間、中小規模の資本制企業は大幅に解体する。1929年恐慌は、その意味で、中小資本を基礎に構成されていた19世紀的古典的な資本主義の危機ということができる。(3)「ドイツ経済調査委員会」(アンケート委員会)は、中小経営者を委員会において喚問し、その証言を調査したが、それを通じて当時の中小経営者が実際に何を問題とし、それにいかに対応しようとしていたかを知ることができる。彼らにとって最大の問題は競争条件の悪化、とくに過剰競争の状況であり、、それをつくり出した諸要因が問題となる。なかでも、公的半公的諸機関の「直営」ないし「兼営」の諸事業との競合,同業者仲間の相互的競争、とくに公的な委託をめぐる競争入札制度でのそれ、もぐり営業者との競争が問題となる。カルテル問題が認識されるのはとくにそのようななかにおいてである。その成果はとくに社会経済史学会大会で報告される予定であるが、関連して別記の雑誌に発表した。
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