本年度の研究の多くは応用一般均衡モデルの構築に費やされた。同モデルの構築ではデータ収集面での困難を改めて確認した。 次に、このモデルを基礎として、現在の所得税減税及び消費税導入の税制改革の経済効果の分析を行ったが、現在の税制改正を直接にモデルに組み込むことが必ずしも容易でなく、次のように試論的な形をとった:消費税は免税、簡易課税業者などを区別せず、一律に3%課税される。現行間接税の廃止、税率変更については、その財を含む産業の総産出に占める同財の比重を乗じただけ同産業の現行間接税率が削減されるとする。所得税減税については現行間接税の減税額との和が消費税収に一致するよう定められるとし、それに応じて各所得階級で同率だけ限界税率が低下させられる。 この想定のもとで得られた税制改革の効果の要点は次の通りである。 1.現税制改正によって総額約一兆円の厚生効果が生じる。しかし、この効果は最高所得者に最も高く低所得者には負であり、所得再分配の考え方と対立的でその結果ジニ係数は約0.9ポイント上昇する。 2.消費税収は約6兆円、他方所得税の限界税率は約19%低下する。 以上の結果を踏まえ、次年度は次の研究を計画している。 1.税制改正の想定をより現実の改正に合わせ、その評価の方法を含め検討する。 2.次年度の計画の主要目標は、以上の分析を基礎として、最適租税体系の解明を図ることであり、このためにまず、社会的評価関数の推計の問題を検討し、次に最適課税制度の数量的解明を試みる。
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