研究テーマは、中国の「財政」と「金融」の両分野に及ぶ極めて広範囲なものとなっている。申請者は、昭和63年度から3年計画で、これまで続けてきた成果をふまえ、この研究をさらに発展させて一書として公刊する予定である。まず初年度の昭和63年度においては、その端緒として「中国の貨幣制度の形成と発展」と題する論文を発表した。これは、今後進めていく金融研究のベースとなるべきものといえる。 以上の論文発表とあわせて、資料収集の作業も行った。申請者は、中国経済の分析に際しては、歴史的考察がとりわけ重要であると考えている。たとえ、今日的問題を分析するにも今日の資料でもって分析できるほど中国は単純な対象ではないから、史的な視座が必要であろう。こういった立場で研究を進めるため、膨大な資料の収集を行う必要があると同時に、多くの研究者の意見を聴取することが必要となる。 現在、本研究の構成を漸次固めつつ、草稿の執筆にあたっている。その構成を掲げるとつぎのとおりである。「財政」:第1部・財政管理(財政管理、国家予算)、第2部・財政収支構造(財政収支の構造、中央財政と地方財政の収支構造)、第3部・財政収入制度(国営企業財務、国債)、第4部・財政支出制度(基本建設投資、流動資金給付、農業投資、文教行政費)、第5部・租税制度(税収管理制度、農業税、工商業税、所得税、関税、塩税、地方税、「利改税」の後の税制)。「金融」:第1部・貨幣制度(人民幣誕生以前の貨幣制度、人民幣の誕生と価値安定政策、人民幣のデノミネーションとその後)、第2部・銀行制度(私営金融業の改造、銀行制度の発展、農村信用合作社の発展)、第3部・信用制度(貨幣管理制度、預金と貸付け、金利、保険)、第4部・国際金融(外国為替と国際決済、国際収支、対外借款)、第5部・金融構造(資金市場とマネーフロー、インフレーション、金融市場)。
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