昨年度は、プロダクト・イノベ-ション・マネジメントの基本モデルを明らかにするために製品戦略、マ-ケティングおよび周辺分野について基礎的な文献研究を中心に進めたが、今年度は、これまでに整理された知見に基づき、プロダクト・イノベ-ションの諸機能を明らかにし、実際の企業の製品開発・改善活動の事例を通じて基本モデルの妥当性の検証を試みた。すなわち、事例研究によって、ニ-ズ・アセスメントの情報行動の解析、特に営業・販売部門が顧客から得たユ-ザ-のニ-ズを製品計画・改善に結びつける際の情報行動を中心に解析を行ない、製品特性とマ-ケティング特性の関係を明らかにした。この結果から、対象製品の市場に於ける戦略、およびその遂行に必要な手段を明らかにし、さらに設計・製造部門に対しては、より有効な製品改良のポイントを指摘する事が出来た。一方、研究を進める過程で、昨年に引続き関連分野の研究者と研究を行なった。特に経営戦略に関して、広島大学の平木教授、ニ-ズアセスメントの方法および解析手法について、金沢工大の石井教授と共同研究を行ない、それらの成果は、逐次学会で報告した他、新機種導入時における設計・資材手配・生産工程の設計の問題については群馬大学の宮崎教授と共に事例研究を行なった。 以上の研究結果を総括して、平成元年7月に大阪で行なわれたTIMSの国際会議で、品質保障の基礎となる品質経営システムの設計に本研究で提案したモデルを適用した例を発表した。引き続いて、9月にベルリンで開催された、第6回ISPIMの大会で、プロダクト・イノベ-ション・マネジメントの基本機能と、その一部としての製品改良の進め方について発表し、また翌日には、企業に於いてこの手順を応用した事例を研究発表した。今後さらに研究を進めねばならないところは多々あるが、今回の科研費が研究の進捗に大いに役立ったことを感謝する。
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