本年度は、研究課題である企業の事業再構築の分析を実施するにあたっての予備的作業の一貫として調査デザインおよび研究フレームワークの検討を行なった。今後実証分析を進めるため、特に西ドイツでなされた再組織をめぐる実証研究を中心にして、比較研究上の基本的問題が再認識された。それは特に、企業の組織形態、職制、決定メカニズムといったミクロレベルの国情による違いである。例えば、西ドイツの再組織(Reorganisation)で、その中心とされる機能部門制から事業部制への組織形態の移行については、次のことが確認された。 (1)事業部制それ自体派、包括的概念であるため、比較分析を正確に実施可能な操作的定義がなされる必要がある。基本的には西ドイツの実証研究のそれをとることにするが、問題はこの操作的定義によって示された事業部制に関して、具体的に我が国での制度的ならびに機能的関係の確定を行うことと、西ドイツのそれとの対応関係をつけることにある。 (2)フレームワークについては、再組織を行為者、誘因、活動という3つの変数からなる段階的に職別可能なプロセスと捉えることで作成されるが、これら変数で示される構成概念のもとに、実際どのようなインディケータをとりこむかが問題となる。このインディケータのグルーピングにあたっては、統計解析(因子分析、クラスター分析etc)を駆使することの有効性が認められた。 ともかくも、以上の点はいずれも分析結果を左右するものであり、西ドイツ企業の再組織事象の特殊性と普遍性を正確に識別し、我が国の事業再構築を理論的に解明する上で、欠くことのできない予備作業を構成している。なお、これら一連の作業のなかで、西ドイツの実態調査および実証研究の成果を平行して翻訳、出版する準備を進めており、その一部は論文翻訳として本学紀要に掲載している。
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