この研究によって、これまでに「ドイツ合理化運動の研究課題」(『同志社商学』第40巻第3号)と「米独比較企業経営論の史的研究」(『同志社商学』第41巻第3・4号)の二つの論文を発表した。 前者の論文では、1920年代のドイツ合理化運動を研究対象に取り上げたことの今日的意義を明らかにした上で、この時期のドイツ合理化運動の方法とその歴史的位置づけを行い、なぜこのような、ドイツの過去のどの時期よりも、またその当時のどの資本主義国よりも、集中的に、かつ強力に、しかもひとつの国民的運動として合理化運動が取り組まれねばならなかったか、その出発条件と経済的規定要因を明らかにし、最後に、この時期の合理化運動を支えた「合理化の諸科学」の展開をあとづけた。 後者の論文では、ドイツの合理化運動をよりグロ-バルな歴史的視野から把えるため、ドイツとアメリカの独占形成史の比較研究を踏まえ、ドイツでは、アメリカとは異なり、カルテルが支配的であり、1920年代の後半に入ってトラスト運動の本格的展開を見たこと、またこの集中運動をテコに合理化運動が推進されたこと、かかる二つの独占形成の過程を考慮に入れながら、その後の両国の企業経営について、とくに生産技術、生産組織、管理組織の諸問題について比較研究を行った。 また以上の考察を踏えて、ドイツの経営経済学とアメリカの経営管理学の学問的性格の相違とそれぞれの隣接諸科学を含めた、いわば「合理化の諸科学」の共通的性格を明らかにした。
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