本研究は、SECによる会計規制の歴史を4つの段階、すなわち第一段階(1887年-1936年)、第二段階(1933-1936年)、第三段階(1936-1973年)、および第四段階(1973年-現在)に区分し、分析しようとするものである。 昭和63年度は、本年度の計画として当初予定していた(1)資料の本格的調査、(2)アメリカにおける会計規制の第一段階の分析、第二段階の分析、および第四段階の分析を滞りなく消化した。第一段階については、特に今世紀初頭における第一次合同運動とディスクロージャー志向との関係、W.Z.リプリー論文を発端とする1920年代における公開拡張論争の整理を中心として研究を行い、第二段階については、1930年代の会計原則概念を巡る論争および当時における会計原則設定を巡る各利害関係グループの複雑な動向を中心として研究を行った。第四段階については、FASBによる概念構造を巡る論争の整理を中心として研究を行った。しかしながら、この研究の過程において、以上の研究を企業会計規制を巡る最近の国際的な動向との関係の中でさらに深めることが必要となり、当初の計画には入っていなかった国際的局面における規制問題の考察を加味せざるをえなかった。研究代表者および研究分担者がハワイ大学の経営学科で開かれた研究会において研究報告・ディスカッションに参加したのも、そのような視点にもとづき国際的な意見の交換が不可欠と考えたからである。また、西ドイツ・オーストラリアにおける会計規制の問題について研究を行ったのも同様の視点にもとづくものである。
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