本研究は、「公的統制」と「私的統制」との対抗という基本的視点、ならびに、「会計計算」の視点と「ディスクロ-ジャ-」の視点との総合という基本的視点に立って、SECによる会計規制の歴史を4つの階段に区分し、分析しようとするものである。 平成元年度は、大別して、二つの作業を消化した。その第一は、前年度の研究の成果を基礎として、とくに利益概念ないし認識・測定の問題に関する考察をさらに深めたことである。SECによる会計規制史の第二段階から第四段階までの道程は、利益概念ないし認識・測定問題についても、明瞭な三つの段階を画する。すなわち、第二段階において確立された「取引アプロ-チ=取得原価主義・配分思考」にもとづく認識・測定は、第三段階において引継がれながらも、次第に「実現」概念の変化を媒介として変更されはじめ、また、「意思決定=有用性アプロ-チ」に傾斜しはじめ、第四段階に至って、明らかに「意思決定=有用性アプロ-チ」にもとづく認識・測定へと移行した。本年度は、問題のこのような側面の研究を深めるとともに、次の第二の作業をも行った。本年度における第二の作業は、前年度の国際的分野における会計規制の研究をさらに推し進めて、この分野についても、とくに認識・側面の問題について研究を深めたことである。それらすべての成果は別紙に示されている。 本年度は、以上の作業により、一方では、SECによる会計規制の国際的影響力、他方では会計規制の国際的な新しい動向の、SEC会計規制への反作用の可能性について、相当程度明らかにし、当初の研究目的の達成を一層充実させることができた。
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