本研究は、SECによる会計規制の歴史を4つの段階、すなわち第一段階(1887-1936年)、第二段階(1933-1936年)、第三段階(1936-1973年)、および第四段階(1973-現在)に区分し、分析を試みたものである。本研究を貫く基本的視点は、第一に、「会計計算」の視点と「ディスクロージャー」の視点との総合であり、第二に「公的統制」と「私的統制」との対抗という視点である。 本研究は、このような基北的視点に立って、まず第一段階について、とくに今世紀勝頭における第一次合同運動とディスクロージャー志向の生成との関係ならなびに、W.Z.リプリー論文を発端とする1920年代における公開拡張論争に分析を加えることによってSEC会計規制の前史を明らかにし、第二段階および第三段階については、1930年代の会計原則概念を巡る論争および当時における会計原則設定を巡る各理害関係グループの複雑な動向を中心として分析をおこなっている。また、第四段階については、FASBによる「概念的枠組」を巡る論争に関する研究をおこない、とくに最近の諸動向に鑑み、西独、英、豪、加、などにおける会計規制の新動向ならびに国際会計基準次元における「概念的枠組」の研究によって、それを補完している。 最近の会計規制の特徴のひとつは、本来、「会計計算」によって解決さるべき問題を「ディスクロージャーの拡大」によって代替していることである。その結果、「会計ディスクロージャーの拡大」は、「会計計算」そのものの公表の拡大ではなく、主に、「ディスクロージャーの拡大」として現われている。本研究は、分析全体をつうじて、このような最近の会計規制の特徴が、SECによる会計規制の出発点から内在していたことを具体的に明らかにし、会計規制の今後の展望に重要な示唆を与えている。
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