「財テク」活動が企業経営に重要な役割を果すようになるにつれ、新金融商品等を取込んだ新らしい企業ファイナンスを証券取引法会計において開示するにあたり、どのような問題が存しているかについて有価証券報告書の分析およびアンケ-ト調査により明らかにし、文献や専門家のインタビュ-を通し問題解決の方向と具体的方策を検討した。研究対象会社100社の分析と調査から、次のことがえられた。 伝統的な会計制度において既になんらかの形で開示されているオン・バランス項目については、新金融商品の会計処理が統一されておらず結果的に企業に好都合な状況を作っていること、「財テク」における資金の回転率と利回りが外部者には直接捉えられないことの2点が、問題点として浮び上った。前者については一定の機関による会計基準の制定が、後者については注記等の補完情報の充実が考えられる。 いまひとつは伝統的会計ではオフ・バランスとなる金融光物のような契約債務型取引の開示の問題である。米国の会計基準に定められているような値洗い基準の採用により、これをオン・バランス化する方法は、配当可能利益の一元的算定を軸に展開するわが国の会計制度には整合しないと考えられる。これに代えてコンピュ-タを用いる「財テク」の内部管理システムは、実は契約会計を導入したものに他ならないことに着目し、そこで作成されるデ-タを整理し補足情報として開示することを提案した。
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