本研究は、わが国企業の英文アニュアル・リポートにおけるセグメント情報の開示実態について調査し、分析を行うことを目的としているものである。 そのために、まず、上場企業約150社に対して英文アニュアル・リポートの送付を依頼したところ、予想を上回りこの種の依頼としては驚異的な141社の回収(94%)ができた。しかし、それを分析してみると、セグメント情報の開示を全く行っていない企業が約10%あった反面、約15%の企業は現行のディスクロージャー規制にとらわれることなく、自発的かつ積極的にセグメント情報の開示を行っており、またその他約75%の企業も現行のディスクロージャー制度において求められている程度のセグメント情報の開示を行っていた。 これらの調査、分析結果からいえることは、有価証券報告書における開示よりも英文アニュアル・リポートにおける開示の方が、いいかえれば、わが国の投資者に対する開示よりも外国の投資者に対する開示の方が積極的であり、今や、セグメント情報の開示はディスクロージャーの国際的調和の観点から不可避であるとの認識が企業側に浸透してきているあらわれとみることができる。 さらに、1990年4月1日以降の事業年度からはセグメント情報の全面開示が予定されていることもあって、次年度の調査ではセグメント情報の自発的開示が一層積極的に行われるものと予測される。 しかし、英文アニュアル・リポートにおけるセグメント情報の開示がSEC、FASB等アメリカの基準に基づいて行われているのか、それともわが国の基準に基づいて行われているのかが不明な企業も多いので、この点については、今後、インタビュー、郵送による質問等で補強していく必要があると考えている。
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