研究概要 |
作用素環分野では,研究分担者河上哲が,部分環の包含関係について、昨年に引き続き、多面的な角度から研究を行った.PimsnerーPopaにより開拓された、部分環の包含関係を記述する一つの量である相対エントロピ-について、その還元論を完成させた(論文〔1〕)。特に、部分環が局所コンパクト群の不動点環として与えられるケ-スについては、その詳細を明かにすると同時に、群作用の共役類の分類も試みた(論文〔5〕)。以上の研究を続けていく中で、指数とエントロピ-という2つの概念の奥に、部分環の包含関係を記述する指標として、ある種の自己共役作用素(指数型微分と名付けた)が重要な役割を果たしていると共に指数とエントロピ-の両者を制御している事を発見し、この作用素の基本的な性質とその諸公式について調べた。これらについては、論文〔2〕で報告するとともに、平成元年度春の日本数学会・函数解析分科会の特別講演において発表した(詳細は、論文〔3〕,〔4〕). 関数環分野では、研究分担者神保敏弥が,昨年に引き続き領域Dにおける正則関数環A^m(D)のpeak setsやmaximum modulus setsについて研究し、初期の目的であったDの弱擬凸領域への拡張の問題について次の結果を得た.Dが実または複素pseudoーellipsoidのとき,A(D)に対するpeak setsはpeak interpolation setsである.」この結果は〔6〕にまとめ,雑誌Complex Variablesに投稿中である. 可換環分野では、研究代表者が、Traversoによる素イデアルのgluingの概念とTamoneによる準素イデアルのgluingの概念について,その差異を明確にした.また,seminormal ringの場合のgluing列存在定理と対比して、任意の有限型拡大環の中間に準素イデアルによるgluing列が存在する仕組みを明らかにした.これは神戸大学数学雑誌に投稿予定である.(〔7〕)
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