研究概要 |
低質量星の形成に果たす星間磁場の役割を観測的に研究するため、代表的な孤立暗黒雲であるところの「B6」「L1221」、及び「大熊座分子雲」方向の恒星について、uvbyβ測光および星間偏光観測を、国立天文台岡山天体物理観測所と同天文台堂平観測所の188cm望遠鏡及び91cm望遠鏡を利用して行った。 得られた資料の解析により、それぞれの暗黒雲について 1.これまでにない良い精度で距離を決定することができ、従って、半径、質量といった暗黒雲の力学的安定性を論ずる上で欠かすことのできない基礎的物理量の信頼性を格段に高めることが可能になった。 2.恒星の距離、星間減光量、星間偏光度、及び位置角の相互の関係から、暗黒雲内の磁場の関与を明らかに示す星間偏光を検出することができた。 調査した三つの暗黒雲はいずれも200パーセクより近距離であるのにも拘わらず2.5〜5.5%という高い偏光度を示すが、磁場による非球形塵粒子の整列に関する従来の理論では、暗黒雲内でのこのように強い偏光を説明することが困難であり、整列の効率に関する理論の修正の必要性が示唆された。 大熊座分子雲の場合には、物理的につながった中性水素ガス雲があり21cm輝線ゼーマン効果の観測結果があり磁場の視線方向成分強度が既知である。この値及び星間分子線(^<12>CO_2,^<13>CO)の電波観測の結果と、今回得られた星間偏光量及び星間減光量の値を併せて考察することにより、この分子雲内の磁場の強さが、少なくとも20マイクロガウス以上であることを導出した。
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