太陽フレアから放射される高エネルギ-X線(硬X線)とマイクロ波は、強度の時間変動がよく似ていることからこれらの電磁波を放射する電子は共通である、と考えられている。しかし、コロナで加速された電子が磁力線に沿って彩層へ下降しながら放射するのか(thick target model)、あるいは磁気ル-プに捕捉されて放射するのか(thin target model)、粒子加速のメカニズムおよび放射モデルと関連して議論の争点となっている。 本研究では、観測から得られる硬X線のエネルギ-・スペクトルとマイクロ波の周波数スペクトルから、それぞれ独立に電子のエネルギ-・スペクトルを求め、両者を比較することにより上記の二つの放射モデルのいずれかがもっともらしいか、検定を行うことを目標とする。 X線デ-タは米国SMM衛星X線研究班(Dr.B.R.Dennis)の協力を得、電波デ-タは当観測所の野辺山と豊川にある1ー80GHz偏波計による観測を用いた、デ-タ解析から次のような興味ある結果を得た。 (1)X線および電波から独立に求めた電子のエネルギ-・スペクトルのベキ数の間には、ゆるい相関がある。したがって、X線と電波はともに共通の高エネルギ-電子によって放射されていると考えられる。 (2)しかし、当初の予想に反して、観測点は上記二つのモデルから予期される領域の中間に落ち、どちらのモデルがより現実に近いか判定を下すことができなかった。 (3)この結果は、私たちが見逃している何か重要なことを示唆しているのではないかと思われる。この問題についてひきつづき検討する。
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