赤色超巨星における複雑な物理過程及び化学過程を解明するためには高精度分光観測が不可欠である。このためには高性能分光観測システムの確立が最も重要であるが、本研究では最近実用化された高解像CCDを用いてこのような分光観測システムを確立し、これを用いて赤色超巨星の外層構造を解明することを目的としている。赤色超巨星の輻射強度は近赤外領域で最も強く、又現在実用化されているCCDも近赤外で感度が最大であること等に着目し、本年度にミルトソロイ社製の近赤外用大型がグレーラングを導入し近赤外領域で高い効率を有する分光システムの確立をはかった。当グレーテングはすでに納入され現在岡山天体物理観測的のクーデ分光器に組み込む作業を行いつつある。本グレーテングにより改良された分光観測システムを用いた本格的天体観測に本年3月16〜21日に予定されている。 上記本観測にそなえて今迄すでに観測されたデータの予備的検討を行い、本研究における今後3ヶ年の観測計画を立案した。赤色超巨星のスペクトルは極めて複雑な時間的変動を示すことが知られており、本研究では3ヶ年にわたる時系列スペクトルを観測しこれら赤色超巨星外層大気に於ける速度場の変動を明らかにし、かつ異なる領域で形成される各種原子分子スペクトルの解析から外層大気の多重構造を明らかにすることを目的としているが、この目的のために有効万スペクトル領域の選定を行った。又、CCD高分散スペクトルの整約及び解析に必要なソフトウエアの開発を進め、二次元CCD画像より正しくスペクトルを復元するソフトウエアシステムを完成した。 以上によりハード、ソフトの両面にわたり高分散分光システムが確立し、今後3ヶ年にわたる時系列スペクトルの観測の準備に完了した。
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