研究概要 |
本研究は新しい検出器であるCCDを高分散分光観測に応用し、これを用いて赤色巨星、超巨星大気に於ける複雑な物理構造及び化学過程を明らかにすることを目的としている。本年度はまずすでにCCD分光システムが確立された岡山天体物理観測所の188センチ反射鏡ク-デ分光器を用いて,各種赤色巨星、超巨星の近赤外スペクトルを観測した。本年度はまずこれらのスペクトルの内特にCN分子のRed Systemの解析を行い、特に特異赤色巨星の内炭系星を中心に炭素同位体比の決定を行った。その結果、我々の分光システムの分解能は必ずしも十分ではないが、より高分解能のFTS等により得られた結果とほぼ同等の結果が得られることが示された。これから炭素星で^<12>C/^<13>C比は4〜10^4の広い範囲に分布することが明らかとなった。このことに各々の炭素量の特異性とも関連しているが、これらの星で核反応が混合等の物理過程に著しい多様性があることを示唆する。 又、上記分光システムでは分解能がやや不充分であるので,岡山太陽ク-デ望遠鏡のより大型の分光器にCCD検出装置を組み込んで,より高分解能の分光観測を試みた。これにより6等星までの星については高分散スペクトルの観測が可能であり、視線速度の精密測定によるこれら明るい赤色巨星、超巨星に於けるさまざまなスケ-ルの大気変動を明らかにするデ-タが得られた。しかし、この分光装置の欠点は一度に観測されるスペクトル領域が著しく狭くわずか10Å程度しかないことである。この点を改良するためCCDチップを4個直列に用いた新しいCCD分光システムを設計し、その設計にとりかかった。これにより、さらに高分散分光に高い高率の向上が期待される。
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