本研究の目的は、特異炭素星に対する二つの仮説、連星説と孤立星説、を電波観測によって比較検討する事にある。今年度は酸化珪素電波線の観測結果を検討した。観測の目的は酸化珪素メ-ザの検出を通じ、酸素リッチな光球面の存在を確認することにある。 北天の星に対して野辺山45m鏡、南天にはチリのESO/SESTサブミリ望遠鏡を用い観測を行ったがどの特異炭素星からも、酸化珪素を検出できなかった。同時に行ったM型星の探査では検出率が50%を越えている。この結果は、特異炭素星システムにおいては酸素リッチな光球面が存在しないことを強く示唆している。我々の電波分子線観測の結果、(1)昨年度の水メ-ザ-探査により酸素リッチな星周層の存在を確認し、一方、(2)今年度の酸化珪素メ-ザ-探査からは酸素リッチな光球面の存在に強い疑問が投げかけられた。結論として、我々の電波観測は連星説よりは孤立星説を強く支持するものである。 今年度は、並行して、可視波長域スペクトルの研究を開始した。その結果、南天で挙げられていた五つの特異炭素星の内二つは同定と分類の誤りであることが判った。残りの三つの炭素星を分類した結果、全てがJ型炭素星である事が見いだされた。これにより特異炭素星はJ型星にのみ特有な現象という可能性が浮上してきたので、来年度は北天の星のスペクトル観測を計画している。
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