本研究の目的は、シリケイト輻射帯を伴う特異炭素星に対する二つの仮説、連星説と孤立星説、を電波観測によって比較検討する事にある。このため初年度は水メ-ザ-の観測を全天の特異炭素星に対して行い、星周層の化学組成、質量放出の大きさを研究した。引き続き、今年度は酸素珪素電波メ-ザ-の観測結果を検討し、酸素リッチな光球面の存在を調べた。なお、同時に行った可視波長域スペクトルの観測から、南天で挙げられていた五つの特異炭素星の内二つは同定と分類の誤りであることが判った。 水メ-ザ-の観測は野辺山45m境、オ-ストラリア・パ-クス64m鏡を用いて行った。全天七つの特異炭素星中三星から水メ-ザ-が検出された。この比率は赤外ミラ、OH/IR星のそれに近く、システムに活発な質量放出が伴っていることを示している。酸化珪素メ-ザ-の観測には野辺山45m鏡とチリ・セスト15mサブミリ望遠鏡が使用されたが、どの天体からも酸化珪素メ-ザ-は見つからなかった。この結果は、特異炭素星システムにおいては酸素リッチな光球面が存在しないことを強く示唆している。 このようにして我々は電波分子線観測に基づき、1)酸素リッチな星周層の存在を確認し、一方、2)酸素リッチな光球面の存在に強い疑問を問い投げかける結果を得た。結論として、我々の観測は連測は連星説よりは孤立星説を強く支持するものである。 補足になるが、可視スペクトルの予備的研究から、特異炭素星はJ型星にのみ特有な減少ではないかという可能性が浮上してきた。今後は可視域スペクトルの研究を予定している。
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