本研究の目的は、微分回転している星の内部で励起される流体力学的な不安定性によって励起される乱流による角運動量輸送とそれにともなう物質・熱の輸送の効果を調べ、特に降着物質の持つ角運動量の降着星の内部構造・進化への影響を評価することである。本年度は3年計画の2年目であり、初年度は、成層回転流体では非軸対称モ-ドのバロクリニック不安定性のために乱流が遍在しているとして、現象論的にではあるが、それによる混合の効果を考慮した、首尾一貫したモデル方程式を定式化したが、本年度は、それに基づいて、恒星進化の数値計算のコ-ドの開発に取り組んだ。現在、コ-ドのチェックを兼ねて、降着星の予備的な計算をしている段階である。乱流による熱と物質の輸送は、混合層での核反応へ導くことになり、降着星が白色矮星な場合には、新星爆発やI型超新星爆発、中性子星の場合は、X線バ-スト等様々な現象に応用できるが、現在は主としてのX線バ-ストのモデルへの適用を考えている。 同時に、乱流混合から核燃焼に至る数値計算のアルゴリズムの検討のため、金属欠乏星の進化を計算した。低質量星の場合、ヘリウムの核フラッシュで発生する対流が水素層に到達し、その際、対流層に混合した水素は内部へ運ばれ、核燃焼の暴走を起こす。混合した水素の乱流による輸送・拡散、核反応の進行を追い、引き続く表面流層の進入に伴う、核反応生成物へ表面への輸送・炭素星の形成に至る過程を計算できることを示した。 それとともに、角運動量輸送の効果を取り入れたモデルとの比較のための基礎資料を得る必要から、これらの効果を無視したモデルの性質を調べた。低質量主系列星の場合は、降着星の内部での対流による熱輸送の構造への効果を、ヘリウム殻燃焼星については、降着に誘導される、内部の重力熱力学的な構造の変化を明らかにした。
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