1.本科研費補助金によって周波数逓倍器(110〜170GHz)を導入し、これまでの実験室分光計と併せて55〜400GHzの周波数範囲をカバーできるようにした。この装置を用いて、星間分子、あるいはその候補となる分子の分光を行なった。 2.星間分子CCSおよびその同位体種のスペクトルを110〜170GHzの範囲で測定した。これまで実験室、星間空間で測られているデータと併せて、解析し、分子定数を改良した。それをもとに、今後の詳細な観測のための静止周波数を正確に決定した。 3.炭素鎖分子C_4H、C_3Nの振動励起状態のスペクトルを実験室で明らかにした。その結果、振動励起したC_4Hのスペクトルは赤色超巨星IRC+10216で多数観測されたが、振動励起したC_3Nのスペクトルはまったく見られないことがわかった。両者の振動エネルギーが同程度であることを考えると、C_4Hが特異的に振動励起していることがわかる。その機構としては、C_4Hの低い電子励起状態が関与していると考えられる。 4.CH_4とN_2の混合ガスの放電プラズマ中に、CH_2Nラジカル、およびHNCNラジカルの回転スペクトルを検出した。140〜400GHzの範囲で多数のスペクトル線を測定し、それぞれの分子の分子定数を正確に決定した。CH_2N、HNCNはそれぞれ星間空間におけるCH_2NH、H_2NCNの生成機構に深く関与している。CH_2Nについては米国のFCRAOの14m鏡を用いて探したが、検出できなかった。HNCNについては野辺山の45m鏡による探索を計画している。 5.H_2Sの放電プラズマ中にHS_2ラジカルのスペクトルを検出し、分子定数を決定した。この分子の探査はハワイのJCMTで計画中である。 6.今後、110ー170GHz帯での実験室分光をすすめ、新しい炭素鎖分子の検出を目ざしたい。
|